新型インフルエンザやバイオテロの脅威など感染症によるさまざまなクライシスが問題になる中、保健当局や各医療機関では健康危機管理体制の構築が喫緊の課題となっています。TCMIDでは、2009年度から東北地区ブロックにおいて健康危機発生時に適切な対応ができる人材を育成する教育プログラムを始動させる予定です。東北地区ブロックでの5つの感染症クライシス分野として、①医療関連感染症、②輸入感染症、③新興・再興感染症、④災害と感染症(人為災害を含む)、⑤食品衛生を掲げ、医師、看護師、薬剤師、検査技師、栄養士、事務職等の幅広い職域の方々を対象に考えています。(図1)それぞれの研修生は、その職域に応じて、導入研修としての座学による講義等に加えて、実際のアウトブレイク事例での実践能力の向上を図るべく実務研修を計画しています。(図2、表1)2008年度は、TCMID短期コース(試行)を2回開催しました。(図3)
図1 東北ブロック地区での5つの感染症クライシス分野
医療関連感染症
- 感染症学、臨床微生物学
- 感染制御活動
- サーベイランス
- 実地疫学調査
- 職業曝露感染
輸入感染症
- 熱帯医学、臨床寄生虫学
- 衛生地誌、疫学情報
- 予防法
- トラベルワクチン
新興・再興感染症
- 新型インフルエンザ
- ウエストナイル熱
- 動物由来感染症
災害医療
- 自然災害
- バイオテロ
食品衛生
- 食中毒の診断・治療
- 食品監視と食中毒調査
- 行政指導
図2 TCMIDによる導入研修と実務研修
5つの感染症クライシス分野
- 医療関連感染
- 輸入感染
- 新興・再興感染
- 災害医療
- 食品衛生
導入研修(職種、期間による)
【目的】最新の知識の導入、情報の共有
【内容】 コース
- 基盤1 感染症学・臨床微生物学
- 基盤2 感染制御学
- 基盤3 臨床疫学・統計学
- 基盤4 リスクコミュニケーション
- 応用1 バイオテロ対策
- 応用2 熱帯感染症
- 応用3 予防接種
- 応用4 食品衛生
- 応用5 新興・再興感染症の話題
- 応用6 自然災害の感染症対策
実務研修(チームとしての活動)
【目的】 実践能力の向上
【内容】 アウトブレイク発生時の活動
- 基盤 TCMID教官の同行・指導による実務研修
- 応用 TCMID教官による遠隔指導による実務研修
表1 職種別のスキル(導入研修)の重要性
分類 | 内容 | 医師 | 看護師 | 薬剤師 | 検査技師 | 栄養士 | 事務職 |
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基盤1 | 感染症学・臨床微生物学 | ◎ | ○ | ◎ | ◎ | ○ | ○ |
基盤2 | 感染制御学 | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ |
基盤3 | 臨床疫学・統計学 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ |
基盤4 | リスクコミュニケーション | ◎ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
応用1 | バイオテロ対策 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ◎ |
応用2 | 熱帯感染症 | ◎ | ○ | ◎ | ◎ | ||
応用3 | 熱帯感染症 | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ||
応用4 | 食品衛生 | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ○ |
応用5 | 新興・再興感染症の話題 | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
応用6 | 自然災害時の感染症対策 | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ◎ |
図3 2007年度 TCMID短期コース(9月)
感染制御指導法(賀来)
臨床微生物学(平潟)
抗菌剤の適正使用(國島)
バイオテロ対策 (加來)
災害医療と感染症対策
輸入感染症
感染疫学
災害医療と感染症対策
輸入感染症
感染疫学
臨床微生物学実習(長澤)
リスクコミュニケーション模擬記者会見(高坂・加來)