感染症は複数の臓器が同時に障害されたり、感染症のために社会生活が大きく制限されることもあることから、患者とその取り巻く状況を俯瞰して総合的なマネジメント(診断、治療、予防、社会復帰)に心がけています。さまざま診療科で治療中に見つかった細菌感染症、ウイルス感染症、真菌感染症、原虫・寄生虫感染症と多岐にわたる感染症についても、感染症診断のサポート、抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬の選択や投与に関するアドバイスや、感染予防に関するコンサルテーションなど担当診療科や主治医への支援を行っています。具体的な診療内容としては、外来診療では不明熱、HIV感染症、渡航者感染症などを中心に診断・治療を行っており、病院内診療では、病院内感染症(例えばカテーテル関連血流感染症、術後感染症)、さらに移植関連感染症、免疫不全感染症などの感染症予防・治療などを担当診療科と協力しながら診療に当たっています。
本診療科では、感染症専門医・指導医、抗菌薬化学療法指導医、インフェクションコントロールドクター(ICD)、感染症実地疫学専門家などの感染症や感染制御に関するさまざまな資格を有する専門スタッフが密に連携して診療をおこなっています。敗血症や肺炎などの重症・難治性感染症、薬剤耐性菌感染症、飛沫・空気伝播性感染症、移植関連感染症、免疫不全関連感染症、外科関連感染症など、院内におけるさまざまな感染症の診断・治療・予防に関する総合的なマネジメント業務を実践しています。
院内外のさまざまな専門家と意見交換しながら診療に当たっています。感染症は原因微生物が伝播する、すなわち疾患を他者にもおこし得るという特殊性があるため、個人や施設を超えて、地域に伝播して広がる可能性があります。そのため、総合感染症科では、院内での感染対策活動だけでなく、地域の医療施設における感染症診療・感染症対策も支援しています。また、エボラウイルス感染症など感染リスクの高い感染症にも対応可能な、宮城県における唯一の第一種感染症指定医療機関として、各医療機関・行政とさらに連携を深めていきたいと考えています。
科長・特命教授 徳田浩一
(1)感染症全般
感染症は特定臓器の疾患に限らないため、総合的な診断、治療を心がけております。細菌感染、ウイルス感染、真菌感染、原虫・寄生虫感染と多岐にわたる微生物の診断、治療を行っています。
(2)不明熱の診断・治療
長期にわたる微熱、発疹、関節痛、リンパ節腫脹などを主症状として来院された患者さんを中心に診療し、必要があれば診断確定後に該当する臓器別診療科にご紹介、感染症の診断がついた場合には引き続き当科でフォローさせていただきます。
(3)HIV感染症
宮城県におけるエイズ治療拠点病院として、HIV感染症の診断と治療を行っています。
(4)渡航者感染症
渡航者下痢症、デング熱などの診療を行っています。
(5)院内発症の感染症の診断・治療
本院には様々な原因疾患に対する治療目的で入院されている方の中で、手術、化学療法、放射線治療を行っていく中で、患者さんの免疫状態によっては、普段かからないような日和見感染症や治療の一環で挿入される体内デバイスに起因した感染症を発症する方が少なからずおります。
当科では当院の感染管理室および微生物検査室と協力の上、入院中の患者様の感染症にも積極的に対応しています。
1) 研究的なこととして、臨床で得られた知見をもとに薬剤耐性菌の分子疫学的手法を用いた解析や感染症の重症化因子に関しても検討を行っています。
2)「感染症コンサルテーション」
- 2009年3月より病院内のさまざま感染症に対して院内コンサルテーションを実施している。診察依頼や電話相談に加えて、入院患者さんの状態や検査データなどから、感染症の診断・治療、予防策に関する助言を行っています。
- - 血液培養や髄液培養陽性時
- - MRSAなどの薬剤耐性菌検出時
- - Clostridium difficile toxin 検出時
- - インフルエンザウイルスなどの検出時
- - 抗酸菌(結核菌を含む)検出時
- - 抗菌薬適正使用の推進
- - 感染対策へのアドバイス
3) HIV感染者からのウイルス分離および解析
仙台地区で発生した新規HIV感染者の血液からウイルスを分離し、分離ウイルスの特性の解析、薬剤耐性の分析などを行っています。
感染症の診断・治療・予防・疫学解析・病態解析さらに地域に根差した感染症危機管理、感染制御ネットワークに関する診療、教育、研究を実践することで、東北大学病院ならびに宮城県・東北地域の医療関連施設、地域社会における総合的な感染症マネジメントを行うことで、質の高い感染症診療を提供する。さらに教育啓発活動・ネットワーク支援活動、研究業務の実践を通じ、得られた知見から感染症診療・感染制御の分野で東北地域はもとより、我が国はもとより世界に向けて発信していきます。
お願い
感染症は特定臓器に得られた疾患ではなく、診療科横断的な診療を行っています。新しい感染症の診断や治療法に関する研究を進めていく中で、患者さんから得られた菌株の解析において、患者さんの臨床的な背景に関しても解析を加える場合があります。その都度、本学の倫理委員会の承認得て研究を進めてまいりますが、皆様のご協力、ご理解いただけますと幸いです。
初期研修で全般的な知識と技能を身につけた後、感染症内科医としてさらに研鑽を積みながら、内科認定あるいは感染症専門医の取得を目指し3年目以降の進路を考えます。
その中で、大学院への進学も積極的に進めており基礎研究(薬剤耐性菌の分子疫学的研究や感染症の宿主免疫応答など)を、多施設とも共同で研究を行っております。
さらに、当院で得られた知見をもとに血液培養陽性例の解析や感染管理に関する臨床研究も行っております。(詳しくはホームページをご覧ください。)
当科では特にトレーニング期間を設けておりませんが、大学院に進学した後もスタッフと協力して感染症診療および感染管理に携わることが可能です。
当科の感染症トレーニングは病院における感染症診療・感染管理にとどまらず、実験室での分子疫学解析、病態解析に加え、感染症危機管理、感染制御ネットワークなど地域における感染症マネジメント能力を取得することを目標としています。
具体的な病院業務は以下のとおりです。
- 1. 感染症コンサルタントを受け、主治医の適切なサポートする。
- 2. 血液培養陽性者や耐性菌検出例に関しても当方から出向き積極的に感染症診療、感染管理に関するマネジメントを行う。
- 3. 感染症科医がメインで主治医となる不明熱、HIV、熱帯感染症などの入院管理
- 4. HIV、不明熱、結核、旅行医学、予防接種などの感染症外来
- 5. 学部学生や初期研修医への指導
- 感染症コンサルトに関しては大学病院という特色から移植関連感染症(日本唯一の全臓器移植施設)、免疫抑制者の感染症、心臓血管外科など各種外科術後感染症といった特殊感染症に加え、市中病院で経験することの多いHIV感染症、寄生虫感染症、腸チフスなどの熱帯病まで様々な症例に曝露することができます。血液培養陽性例や新規耐性菌(MRSAやESBL産生菌など)は全例チェックし、全症例において診療支援を行っております。
- 6. 地域における感染症診療・感染症対策の支援
- 地域における感染症診療のレベル向上のため、地域セミナーの開催による情報の共有や、集団感染事例への対応、行政や社会全体を含めた感染症対策の地域ネットワーク構築を行っています。
- 7. カンファランス
- 毎日13:15~臨床ミーティング(当日の血液培養陽性例や耐性菌検出例の臨床カンファランスをおこなっている。)
- 火曜日11:00~感染管理ミーティング
- 毎月第4火曜日14:00~リサーチカンファランス(基礎研究・臨床研究)
希望者には、長崎大学や大阪大学の熱帯感染症プログラムへの参加も積極的に推奨しており、当科スタッフでも4名がこれまで参加しています。
<短期トレーニングコースへの参加>
希望者には国内外の感染症診療、感染管理に関する研修コースを受講可能である。
<当科で取得可能な資格>
東北大学大学院医学系研究科博士課程に進学した場合
<他診療科、研修協力病院、専門施設との共同で取得可能な資格>
東北感染症危機管理ネットワーク http://www.tohoku-icnet.ac/
日本感染症学会 http://www.kansensho.or.jp/
日本化学療法学会 http://www.chemotherapy.or.jp/
日本環境感染学会 http://www.kankyokansen.org/
日本臨床微生物学会 http://www.jscm.org/